1. 将来の給付額が確定している
確定給付型企業年金の最大のメリットは、退職後に受け取る年金額があらかじめ確定していることです。
勤続年数や給与額に基づいて計算された年金額が保証されており、労働者は退職後の生活資金について計画を立てやすくなります。
具体例
例えば、40年間勤務した従業員が退職する際、確定給付型企業年金により、毎月安定した年金給付が受け取れることが事前に分かっています。
これにより、労働者は老後の収入について心配せず、計画的に生活を送ることができます。
2. 投資リスクを負わない
確定給付型企業年金では、年金資金の運用リスクは企業が負担します。
市場の変動や経済状況の悪化により年金資産が減少したとしても、労働者が受け取る年金額は保証されています。
労働者が運用の結果に左右されず、安定した給付を受けられる点が重要です。
具体例
株式市場が下落しても、労働者が受け取る年金額は変更されないため、リーマンショックのような経済危機があったとしても、労働者には直接的な影響がありません。
年金額が減額される心配がなく、老後の生活設計が安定します。
3. 長期勤続による年金額の増加
確定給付型企業年金は、勤続年数が長ければ長いほど受け取る年金額が増える仕組みです。
これにより、長期間同じ企業で働くことで、退職後の年金給付が手厚くなり、老後の収入がさらに充実します。
具体例
例えば、20年間勤務した従業員よりも、30年間勤務した従業員の方が受け取る年金額は大きくなります。
このように、長期勤続が年金額の増加につながるため、労働者にとって長く働くインセンティブとなり、退職後の生活に大きな恩恵を与えます。
4. 老後の生活の安定感
確定給付型企業年金は、公的年金(国民年金や厚生年金)と併せて受け取ることができるため、老後の生活資金がさらに手厚くなります。
公的年金だけでは不足する可能性がある生活資金を、確定給付型企業年金が補完する形となるため、より安定した老後生活が実現します。
具体例
公的年金だけでは月額15万円程度しか受け取れない場合でも、確定給付型企業年金によってさらに数万円が加算されることで、生活費を十分に賄えるようになります。
これにより、医療費や生活費の不安が軽減され、安心して老後を過ごすことができます。
5. 企業の信頼感が高い制度
確定給付型企業年金は、企業が責任を持って従業員の老後を支える制度です。
このため、企業に対する信頼感が高まり、従業員は「企業に守られている」という安心感を持つことができます。
福利厚生が充実している企業に勤めることで、仕事に対するモチベーションも向上します。
具体例
大手企業や上場企業では、確定給付型企業年金を提供している場合が多く、こうした企業に勤める労働者は、老後の生活資金が保証されているという安心感を持つことができます。
このように、安定した福利厚生制度を持つ企業は、従業員の信頼感が高く、働きやすい環境といえます。
6. インフレリスクの軽減
確定給付型企業年金では、場合によっては給付額が物価変動に連動することがあります。
これにより、インフレーションによって生活費が上昇しても、年金の実質的な価値が守られる場合があります。
特に物価が上昇した場合、年金の価値が目減りする心配が少なくなります。
具体例
例えば、物価が上昇し続ける経済状況の中で、企業年金の給付額が物価スライドで調整される場合、年金額もそれに応じて増加することがあります。
これにより、労働者はインフレに対しても一定の保護を受けることができます。
7. ライフプランに合わせた給付選択肢
確定給付型企業年金では、一時金で受け取るか、年金として分割して受け取るかなど、ライフプランに合わせた受け取り方を選択できる場合があります。
これにより、個々のライフスタイルや老後の計画に応じた柔軟な選択が可能です。
具体例
退職後にまとまったお金が必要な場合、一時金として年金を受け取る選択肢があります。
一方、長期的な生活費を安定して得たい場合は、年金として分割受給することも可能です。
これにより、自分のライフスタイルに最適な受け取り方を選べます。
8. 税制優遇措置の恩恵
年金の掛け金に対して税制優遇措置が適用されることがあります。
企業年金への拠出額が所得控除される場合、労働者の税負担が軽減され、結果的に手取り収入が増えることもあります。
具体例
確定給付型企業年金の拠出金が所得控除の対象となることで、課税所得が減少し、所得税や住民税の負担が軽減されます。これにより、労働者は税制面でもメリットを享受できます。
確定給付型企業年金は、労働者にとって非常に大きなメリットをもたらす制度です。
特に、将来の給付額が確定しており、投資リスクを負わずに安定した収入を得られる点が大きな利点です。
長期勤続することで年金額が増加し、公的年金と併せて老後の生活をより安定させることができます。
また、税制優遇措置や企業の信頼感もプラス要素となり、労働者にとって老後に備える安心感を提供します。
1. 年金の受け取り額が固定されているため、インフレリスクがある
確定給付型企業年金では、受け取る年金額が事前に確定しているため、インフレによって物価が上昇しても、年金額がそれに連動しない場合があります。
物価の上昇に対して年金の実質価値が目減りするリスクがあるため、老後の生活費が年金だけでは不足する可能性があります。
具体例
年間240万円の年金を受け取ることが確定していても、インフレによって物価が上昇し、生活費が増えると、その年金額では生活費を十分に賄えなくなる可能性があります。
例えば、インフレ率が5%の場合、10年後には年金の購買力が約40%減少してしまうため、実際の生活水準が低下するリスクがあります。
2. 企業の財務状況に依存するリスク
確定給付型企業年金は、企業が将来の年金給付を保証する制度です。
したがって、企業が経営危機や破綻に直面すると、年金の給付が減額されたり、最悪の場合は支払われなくなる可能性があります。
企業の存続や財務状況に大きく依存しているため、長期的な安定性に不安があることがデメリットです。
具体例
企業が経営破綻した場合、その企業が約束した年金の全額を受け取ることができなくなることがあります。
実際に2000年代初頭の米国の大企業エンロンの破綻により、従業員の年金が大幅に減額されたケースがありました。
このように、企業の財政状況が悪化すると、労働者が予定していた老後の資金計画が狂ってしまうリスクがあります。
3. 転職時の年金の持ち運びが困難
確定給付型企業年金は、企業ごとに設定されているため、転職した場合にその年金制度を他の企業に移行することが難しいです。
転職をすると、確定給付型企業年金での積立額や給付条件が無効になるか、もしくは極めて不利な条件での清算になる場合が多いため、労働者にとって大きなデメリットとなります。
具体例
転職前に10年間積み立てた確定給付型企業年金があったとしても、転職先では別の年金制度に加入する必要があり、それまで積み立てた資金が無効になったり、給付額が減少したりします。
また、年金受給の資格を満たしていない場合、積立金を受け取れないケースもあります。
4. 柔軟性に欠ける
確定給付型企業年金は、受け取る額が確定しているため、労働者が自分で運用方法を選んだり、リスクに応じた投資戦略を立てることができません。
また、年金の受け取り方法やタイミングに関してもあまり柔軟性がない場合が多いです。
これにより、個々のライフスタイルや老後の計画に合わせた柔軟な対応ができないことがデメリットとなります。
具体例
例えば、早期退職を希望する労働者が、退職後すぐに年金を受け取りたいと考えても、企業年金の規定により60歳まで受け取れない場合があります。
また、投資意欲の高い労働者が自ら資産を運用したいと考えても、確定給付型企業年金ではその自由がないため、年金制度の選択肢が限られてしまいます。
5. 年金の計算が複雑
確定給付型企業年金は、給与や勤続年数などの複数の要素に基づいて年金額が計算されますが、その計算方法が複雑なため、退職後にどれだけの年金を受け取れるのかが分かりにくいことがあります。
特に、転職やライフイベントの変更によって年金額が変動する場合、その影響を正確に把握するのが難しいです。
具体例
例えば、企業によっては「最終給与ベースで年金を計算する」といった制度があり、勤続年数と給与額に基づく複雑な計算式で年金額が決定されます。
労働者が自分で将来の年金額を正確に把握するのは難しく、予想と実際の給付額にギャップが生じることがあります。
6. 他の年金制度に比べて遺族給付が不十分な場合がある
確定給付型企業年金では、労働者が亡くなった場合に遺族への年金給付が行われることがありますが、その給付額や条件が企業ごとに異なるため、遺族給付が不十分であることがあります。
公的年金と比べて、遺族に対する保障が手薄な場合があるため、遺族の生活保障に不安が生じる可能性があります。
具体例
労働者が受給開始前に亡くなった場合、遺族が受け取れる年金給付が非常に少ないか、または全く支給されないケースもあります。
このように、確定給付型企業年金では遺族給付に制限がある場合があり、特に扶養家族がいる労働者にとってはリスクが高くなります。
7. 早期退職や転職による損失
確定給付型企業年金では、年金の受給資格を得るために一定の勤続年数が必要な場合があり、その期間を満たさずに退職した場合、年金給付を受けられないことがあります。
また、早期退職を選択すると、受給額が減額される場合もあります。
このため、退職タイミングが柔軟でない労働者にとっては、不利な制度になることがあります。
具体例
退職前に定年までの数年間を残して早期退職を選んだ労働者が、予定していた年金の半分以下しか受け取れないというケースがあります。
このため、早期退職や転職を考えている労働者にとっては、確定給付型企業年金は柔軟性が低く、老後の収入計画に不利となる可能性があります。
確定給付型企業年金は安定した給付を約束する一方で、労働者にとってのデメリットも少なくありません。特に、インフレによる購買力の低下や企業の財務状況に依存するリスク、転職時の年金の移行困難さなどが挙げられます。また、制度の柔軟性が低いため、労働者のライフスタイルやキャリア計画に合わせにくい点もデメリットといえます。