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中退共・特退共制度

2024年07月17日

中小企業退職金共済制度(中退共)と特定退職金共済制度(特退共)は、日本の中小企業における従業員の退職金制度を支援するための公的な仕組みです。
それぞれの制度の内容、仕組み、決まりについて具体的に説明します。
中小企業退職金共済制度(中退共)
内容と目的
  • 中小企業が従業員のために退職金を準備しやすくするための公的な共済制度。
  • 厚生労働省が所管し、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営。
  • 退職金の支給額が企業の経営状態に左右されず、安定した退職金の支払いが可能。
仕組み
  1. 加入対象:中小企業(資本金・従業員数など一定の条件を満たす企業)。
  2. 掛金:企業が毎月一定額の掛金を納付。掛金は5,000円から30,000円までの範囲で設定可能。
  3. 国の助成:新規加入時や一定の条件を満たした場合、国から助成金が支給されることもある。
  4. 退職金の計算:加入期間と掛金によって退職金額が決まる。退職時に一括で支給される。
  5. 運営管理:掛金は中小企業基盤整備機構が管理・運用し、利子や運用益が上乗せされる。
制度の決まり
  • 掛金の支払いが一定期間続かない場合や、企業が倒産した場合でも、従業員に退職金が支払われる。
  • 掛金の納付が途中で停止した場合でも、それまでの納付分に応じた退職金が支給される。
特定退職金共済制度(特退共)
内容と目的
  • 特定の職種や業界に特化した退職金共済制度で、業界団体や地方公共団体が運営。
  • 中退共と同様に、中小企業の従業員に安定した退職金を提供することを目的とする。
仕組み
  1. 加入対象:特定の職種や業界の中小企業が対象となる。
  2. 掛金:加入する企業が毎月掛金を納付。掛金額や納付方法は各共済団体によって異なる。
  3. 運用:掛金は各共済団体が運用し、運用益が上乗せされることがある。
  4. 退職金の計算:退職金額は掛金の納付状況や運用成果に基づいて算出される。
制度の決まり
  • 掛金の支払いが途絶えた場合の取り扱いは各共済団体の規定によるが、基本的には掛金の納付実績に応じて退職金が支給される。
  • 企業が倒産した場合でも、退職金の支払いが保証されるような仕組みがあることが多い。
両制度の共通点
  • 目的:従業員の退職後の生活安定を図り、中小企業の福利厚生の充実を支援する。
  • 公的性格:国や地方公共団体が関与しているため、企業や従業員にとって信頼性が高い。
  • 運用の安定性:専門機関が運用を行い、利子や運用益が加算される。
これらの制度により、中小企業でも従業員の退職金を安定して準備することが可能となり、企業の福利厚生の一環として重要な役割を果たしています。
中小企業退職金共済制度(中退共)と特定退職金共済制度(特退共)は、日本の中小企業の福利厚生を充実させるために作られました。
その背景や歴史を具体的な事例を交えて説明します。
中小企業退職金共済制度(中退共)
背景と歴史
  • 戦後復興期:第二次世界大戦後、日本は経済復興に向けて邁進していました。この時期、大企業は福利厚生を整えられる余裕がありましたが、中小企業は財政的に厳しく、従業員の退職金を準備することが困難でした。
  • 1959年:労働基準法の改正により、退職金制度の整備が求められるようになりました。しかし、中小企業にとっては依然として大きな負担でした。
  • 1965年:このような背景の中、政府は中小企業の退職金制度を支援するために「中小企業退職金共済法」を制定し、中小企業退職金共済制度(中退共)が創設されました。
具体例
中小企業のニーズ:例えば、家族経営の中小企業である製造業の会社では、長年働いてきた従業員に退職金を支払うための資金が確保できず、退職金制度の導入が難しかった。
しかし、中退共に加入することで、毎月の掛金を納めるだけで従業員の退職金を準備できるようになりました。
特定退職金共済制度(特退共)
背景と歴史
  • 特定業種のニーズ:一部の特定業種(例えば建設業や農業など)は、業務の特殊性から独自の退職金制度を必要としていました。これらの業種では、従業員の就労形態や雇用形態が特殊であり、一般の退職金制度では対応が難しいことが多かったのです。
  • 1970年代以降:特定業種ごとに独自の退職金共済制度が次々と設立されました。これにより、特定の業種における中小企業でも従業員の退職金を準備することが容易になりました。
具体例
建設業:建設業では、現場ごとに雇用契約が異なることが多く、従業員が複数の現場で働くことがあります。特退共に加入することで、各現場の雇用主が掛金を納め、従業員が一元的に退職金を受け取ることが可能となりました。
両制度の意義と影響
中小企業の成長支援:
中退共や特退共の制度導入により、中小企業は退職金制度を安定して運営できるようになり、従業員の定着率向上や企業の信頼性向上に寄与しました。
経済の安定化
中小企業が安定的に退職金を支給できるようになったことで、従業員の生活安定が図られ、国内経済の安定にも寄与しました。
中小企業退職金共済制度(中退共)と特定退職金共済制度(特退共)は、日本の中小企業の福利厚生を充実させ、従業員の退職後の生活を安定させるために設立されました。
これらの制度は、中小企業の経営環境を改善し、経済全体の安定と成長に大きく貢献しています。
具体的な事例を交えることで、これらの制度が中小企業や特定業種の現実的なニーズに応える形で発展してきたことがわかります。
中小企業退職金共済制度(中退共)と特定退職金共済制度(特退共)は、特に中小企業や特定の業種で働く労働者を対象にした退職金制度です。
それぞれの制度がどんな労働者に向いているか、具体例を交えて説明します。
中小企業退職金共済制度(中退共)
対象労働者
中小企業に勤務する従業員:
資本金や従業員数などの条件を満たした中小企業に勤務する正社員が主な対象。
雇用形態の多様性:
正社員だけでなく、パートタイムや契約社員も加入できることがある。
向いている労働者の具体例
1. 製造業の正社員
地方にある中小の製造業で働く正社員。
例えば、家族経営の工場で10年以上勤務しているベテラン従業員。この従業員は、企業の経営状況に関わらず安定した退職金を受け取ることができる。
2. 小売業のパートタイム労働者
地方の中小企業が経営する小売店で働くパートタイム労働者。
週20時間以上勤務しているため、企業が中退共に加入して掛金を納めることで退職金を受け取ることが可能になる。
特定退職金共済制度(特退共)
対象労働者
特定の職種や業界の従業員:
特定の業種(例えば、建設業、農業、漁業、医療業界など)に従事する従業員が対象。
フリーランスや一人親方:
特定の業界においては、フリーランスや一人親方など、個人事業主として働く人も加入できることがある。
向いている労働者の具体例
1. 建設業の職人
建設現場で働く大工や電気工事士などの職人。
例えば、異なる工事現場で働くことが多い大工の一人親方。
この労働者は、特退共に加入することで、どの現場で働いても退職金の積立ができ、将来的に安定した退職金を受け取れる。
2. 医療業界の看護師
特定の医療機関やクリニックで長年勤務している看護師。
例えば、地方の中小クリニックで20年以上働いている看護師が、特退共に加入することで、安定した退職金を確保することができる。
両制度が向いている労働者の共通点
中小企業の労働者
中小企業は大企業に比べて退職金制度が整備されていないことが多いですが、中退共や特退共の導入で退職金制度を整備しやすくなります。
長期勤務者
長年同じ企業や業界で働いている労働者にとって、中退共や特退共は特に有利です。積立期間が長くなるほど退職金額が増加するためです。
安定した退職金を求める労働者
企業の経営状態や業界の景気に左右されずに、安定した退職金を受け取りたいと考える労働者に適しています。
まとめ
中退共と特退共は、それぞれ中小企業の従業員や特定の業種に従事する労働者を対象にした退職金制度です。
これらの制度は、中小企業や特定業種における退職金の準備を支援し、労働者に安定した退職金を提供することを目的としています。
具体例を通じて、これらの制度がどのような労働者に適しているかが明確になります。
●メリット
中退共制度のメリット
1. 退職金準備の簡便化
  • 中小企業が従業員の退職金を計画的に準備できる。
  • 退職金の支給時に資金繰りの心配が不要になる。
2. 税制上の優遇措置
  • 掛金は全額損金(経費)として処理でき、税制上のメリットがある。
3. 従業員の満足度向上
  • 安定した退職金制度の提供により、従業員の定着率が向上する。
  • 福利厚生の充実によって企業の魅力が高まり、優秀な人材の確保に繋がる。
4. 手続きの簡素化
  • 加入・変更・脱退の手続きが簡単で、事務負担が軽減される。
5. 国の補助
  • 新規加入や掛金の増額に対する国からの補助金があるため、コスト負担が軽減される。
特退共制度のメリット
1. 企業独自の退職金制度の設計
  • 企業が独自の退職金制度を設計でき、従業員のニーズに合った柔軟な対応が可能。
  • 企業ごとの特性や従業員の年齢構成に合わせた制度設計ができる。
2. 高額な退職金の準備
  • 中退共制度の掛金上限を超える高額な退職金を準備したい場合に有効。
  • 特定の従業員に対して特別な退職金を準備することができる。
3. 福利厚生の充実
  • 企業の福利厚生の充実が図れ、従業員のモチベーションや定着率が向上する。
  • 企業の社会的評価が向上し、ブランド価値の向上につながる。
4. 長期的な人材育成
  • 退職金制度の充実により、長期的に働く意欲を高め、人材育成の基盤が整う。
  • 経験豊富な従業員の長期的な雇用が期待できる。
中退共・特退共制度を導入することにより、企業は退職金の準備を効率的に行いながら、従業員の満足度や定着率を向上させ、税制上の優遇措置を享受することができます。
さらに、特退共制度を利用すれば、企業独自の柔軟な退職金制度を設計することができ、特定の従業員に対する特別な対応も可能となります。
これらの制度は、企業の魅力を高め、優秀な人材の確保・育成に繋がるため、長期的な企業の発展に寄与します。
●デメリット
中退共制度のデメリット
1. 掛金の負担
  • 毎月の掛金を企業が負担する必要があり、特に資金繰りが厳しい中小企業にとっては負担となることがある。
2. 運用リスクの一部負担
  • 中退共制度は退職金の積立を行うため、制度全体の運用成績が企業に影響を与える可能性がある。
3. 従業員の退職タイミングに影響
  • 退職金制度があることで、従業員が退職金を受け取るタイミングを意識しすぎる場合があり、企業の経営計画に影響を及ぼすことがある。
4. 制度の制約
  • 中退共制度には一定の掛金の上限があり、高額な退職金を希望する場合には不十分な場合がある。
特退共制度のデメリット
1. 制度設計の手間
  • 特退共制度は企業が独自に設計するため、初期段階での設計・導入に時間と労力がかかる。
2. 運用コストの負担
  • 退職金共済制度の管理・運用に関するコストがかかるため、これが企業の経費として負担になる。
3. 複雑な運用
  • 特定の従業員に対して特別な退職金を設定する場合、その運用が複雑になる可能性がある。
  • 法令遵守や適正な運用を確保するための体制が必要となる。
4. 退職金準備のリスク
  • 企業の財務状況が悪化した場合でも、特退共制度に基づく退職金の支払い義務が残るため、企業の経営にとってリスクとなる可能性がある。
中退共・特退共制度を導入することで、企業は退職金の準備を計画的に行い、従業員の満足度を高めることができますが、掛金の負担や制度設計・運用の手間、運用リスクなど、いくつかのデメリットも存在します。
これらのデメリットを理解し、企業の状況に応じて適切に対応することが重要です。
●メリット
中退共制度のメリット
1. 安定した退職金の確保
  • 中退共制度により、退職金が確実に支給されるため、退職後の生活設計が立てやすくなる。
  • 企業の経営状態に関係なく、退職金が保証される。
2. 転職時の持ち運び
  • 中退共制度は、他の中退共加入企業に転職した場合、掛金の引継ぎが可能。
  • 退職金の積立が中断されず、転職先でも継続されるため、転職のハードルが低くなる。
3. 税制上のメリット
  • 退職金の受け取り時には、所得税の退職所得控除が適用されるため、税負担が軽減される。
4. 計画的な積立
  • 定期的に退職金が積み立てられるため、長期間にわたって計画的に退職後の資金を準備できる。
特退共制度のメリット
1. 柔軟な退職金設計
  • 企業ごとに独自の退職金制度を設計できるため、従業員のニーズに合った退職金制度が提供される。
  • 長年勤続した従業員に対して特別な退職金が設定されることもある。
2. 高額な退職金の受け取り
  • 中退共制度よりも高額な退職金を受け取れる場合がある。
  • 特定の条件を満たすことで、より充実した退職金を受け取れる可能性がある。
3. 安心感の提供
  • 特退共制度があることで、従業員は長期間安心して働くことができる。
  • 退職後の生活に対する不安が軽減される。
4. 企業の信頼性
  • 特退共制度を導入している企業は、従業員の福利厚生に力を入れていると評価されるため、安心して働ける環境が整っていると感じられる。
中退共および特退共制度は、労働者に対して安定した退職金の確保や、転職時の退職金積立の継続、高額な退職金の受け取りなど、多くのメリットを提供します。
これにより、労働者は安心して長期間にわたって働くことができ、退職後の生活設計をしやすくなります。
制度の充実は労働者のモチベーション向上にも繋がり、企業にとっても優秀な人材の定着を促す効果があります。
●デメリット
中退共制度のデメリット
1. 掛金の制限
  • 中退共制度には掛金の上限があるため、期待するほどの高額な退職金が得られない場合がある。
2. 退職金の分割受け取り
  • 退職金を一括で受け取る場合と比較して、分割受け取りの場合は総額が減ることがある。
3. 企業の加入状況による影響
  • 転職先の企業が中退共制度に加入していない場合、これまで積み立てた退職金の引継ぎができない。
  • その場合、退職金の積立が中断されるリスクがある。
4. 制度の硬直性
  • 一度加入すると、途中での掛金変更や脱退が制限されるため、柔軟な対応が難しい。
特退共制度のデメリット
1. 特定条件による制約
  • 特退共制度は企業ごとに設計されるため、特定の条件を満たさないと十分な退職金を受け取れない場合がある。
  • 条件が複雑で分かりにくいこともある。
2. 企業の経営状況の影響
  • 特退共制度の退職金は企業の財務状況に依存するため、企業が倒産した場合には退職金の支払いが滞るリスクがある。
  • 特退共制度が企業の自己資金で運用されるため、企業の経営悪化が退職金に影響を与える可能性がある。
3. 税制上の制約
  • 退職金の一部が課税対象となる場合があり、受け取り時に思った以上に税金がかかることがある。
4. 制度の不透明さ
  • 特退共制度は企業独自の設計であるため、労働者がその詳細を把握しにくい場合がある。
  • 透明性に欠ける制度設計では、労働者が十分に制度を理解できず、不利益を被る可能性がある。
中退共・特退共制度は、退職金の確保や労働者の生活安定に寄与する一方で、掛金の制限、企業の加入状況や経営状況に依存するリスク、税制上の制約など、いくつかのデメリットも存在します。
労働者はこれらのデメリットを理解し、自身のキャリアプランや企業選びの際に考慮することが重要です。
企業も制度の透明性を高め、労働者に対して制度の詳細を十分に説明することが求められます。
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